しめじねこ漢方ブログ

漢方を中心に、東洋医学の面白さや役立つ情報をお届けします。

【陰陽論】病気は人体の陰陽バランスの乱れから

前回の記事では、陰陽論の一般的な内容や考え方に触れました。

そして今回は、その陰陽論が東洋医学において人体にどう応用されているかに触れていきます。

 

人体にも陰陽論を適用できる

陰陽論は、「この宇宙に存在するいかなるものでもみな、対立する『陰』と『陽』の二つの面を持つ」という理論が根本にあります。

『陽』とは動的なイメージ、『陰』とは静的なイメージです。

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そしてこの陰陽論は、自然の一部である人体にもまた当てはまります。

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陰と陽のバランスが保たれている = "健康状態"

さて、陰陽論が人体にも例外なく適用できるということをご紹介しました。

そしてここで重要なことは、「陰と陽はそれぞれ単独では存在しない」ということです。

陰と陽は互いに対立・協調しながら一体で存在しており、陰あってこその陽、陽あってこその陰なのです。

つまり、人体も自然と同じく陰と陽のバランスが取れていることが正常と言えるのです。

そして、人には本来この陰陽バランスを保つ働きが備わっています。

しかし、そのバランスが何らかの原因によりどちらかに傾いてしまうと、すなわち病気に繋がります。

さらに、もし陰か陽のどちらかが完全に失われてしまうと、死に至ることもあるのです。

 

多いものは減らし、少ないものは補う

陰と陽のバランスが崩れた状態が長く続くと、病気になってしまいます。

それではもし陰陽バランスが崩れてしまったら、どうすればいいのでしょう?

答えは単純で、もし陰が多いのならその分だけ陰を減らせばいいし、もし陽が少ないのならその分だけ陽を補充すればいいのです(陰陽どちらかが過剰な状態を偏盛、逆に不足している状態を偏衰といいます)。

そうして陰陽の調和を取ることで、体の調子を整えます。

そして、そのような陰陽の調節を助けることにも、漢方薬鍼灸治療が使われるのです。

【陰陽論】東洋医学の根幹をなす理論

陰陽論とは、「この宇宙に存在するいかなるものでもみな、対立する『陰』と『陽』の二つの面を持つ」という古代の哲学思想です。

動的なものを『陽』、静的なものを『陰』として捉え、万物を対立させて考えるのです。

陰陽は単独では存在せず、対立あるいは協調して一体として存在します。

これはとても抽象的な概念で、いかにも理解しづらいように思われるかもしれませんが、以下の表を見て頂ければなんとなくイメージが掴めるのではないでしょうか。    

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陰陽は相対的なもの

陰と陽に分けられたものが、常に陰や陽であるわけではありません。

例えば、冬は陰ですが、寒い日(陰)が続く中にも暖かい日(陽)が存在します。また、男は陽ですが、活発なとき(陽)もあれば静かに休んでいるとき(陰)もあるでしょう。

陰陽とは、決して絶対的なものではなく、あくまで相対的なものなのです。

対立するものによって変化するのです。

 

陰や陽のなかにもまた陰陽がある

すべてのものは陰と陽に分かれますが、それらにもまた陰陽が存在します。

例えば、昼は陽ですが、そのうち朝から日中は陽(陽中の陽)でも日中から夕方は陰(陽中の陰)です。

そして夜は陰ですが、そのうち深夜は陰(陰中の陰)でも明け方は陽(陰中の陽)です。

このように、陰と陽の内部にもまた、陰と陽の対立が含まれているのです。

 

陰陽はあらゆる物事がたえず変化する様子を表す

陰と陽は独立して存在しているわけではありません。

対立あるいは協調しながら互いに作用しあっていて、その関係もたえず変化しています。

そうして陰と陽が互いに制約しあってバランスを取り、片方に行き過ぎないようにしているのです。

これは東洋思想における「陽極まれば陰となり、陰極まれば陽となる」という考え方にあたります。

その様子を的確に表しているものが季節です。

夏至には陽が極まり、冬至には陰が極まります。

そしてそこからは、秋や春を経て相対する陰と陽に転換していきます。

陰陽はたえず変化するとともに、陰から陽へ、また陽から陰へと循環しているのです。

ちなみに下に示した『太極図』は、陰陽の循環を永遠に繰り返すことを表しています。

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(図の上下にある点は、それぞれ陽中の陰、陰中の陽を表す)

 

 

陰陽を人体にも適用できる

さて、今まで陰陽について一般的な考え方を解説してきましたが、小宇宙である人体もまた陰陽に当てはめることができます。

そして、陰陽論と同じく古代中国から発展してきた東洋医学もまた、陰陽の概念を取り入れているのです。

人体は小宇宙!自然との調和を重視する漢方医学

漢方は、古代中国で発達した医学が日本に伝わって、日本独自の発展を遂げてきました。

よって、日本漢方の考え方は、古代中国の思想や哲学を基本としています。

 

東洋医学では、「人間を自然の一部ととらえるとともに、自然の一部である人間の体も、自然と同じ構造をもつ」と考えます。

つまり、人体はさまざまな要素が関連しあって調和しながら構成されていて、さらには人体を取り囲んでいる自然とも相互に関連しながら存在しているのです。

このような考え方を『整体観』といいます。

そして、自然を大宇宙、人体を小宇宙ととらえ、人と自然の調和を重視します。

東洋医学『調和の医学』なのです。

「薬食同源(医食同源)」を考える。東洋医学における”食”の大切さ

突然ですが、「くすり」と聞いてみなさんはどういったものを何を思い浮かべますか?

たいていの方は錠剤や粉薬、カプセルあたりを最初に思い浮かべるかと思います。

さらに考えていくと、座薬や湿布、軟膏、注射……、そして、漢方薬…。

もちろん、これらはすべて「くすり」で間違いありません。

しかしこれらは西洋医学的な「くすり」の捉え方。

つまり「くすり=物質」であり、手で扱えるもの。

誰にでも同じように効くように作られたものを主に指していて、比較的はっきりとその輪郭を捉えています。

 

一方、東洋医学ではもっとおおらかに「くすり」というものを捉えています。

最初に挙げたような、いわゆる西洋医学的な薬だけではなく、普段口にしている食べ物や水、さらには空気も場合によっては「くすり」となり得ます。

薬と食べ物の境界もあいまいなのです。

 

そもそも、東洋医学とは”食”を重視した医学。

周時代には官職として『食医』という位が設けられ、医師のランクの中では内科や外科を抑えて最高位となっているほどでした。

そしてまた、古くから中国では「薬食同源」と呼ばれる思想、つまり『「くすり」も「食べ物」も根源は同じである』、という考えがあります。

正しい食事は病気を予防し、さらには、すでに発症した病気をも治す力があるのです。

ちなみに日本では、「薬食同源」から転じて「医食同源」という言葉が同じような意味で使われています。

大辞林 第三版の解説

いしょくどうげん【医食同源

病気の治療も普段の食事も、ともに人間の生命を養い健康を維持するためのもので、その源は同じであるとする考え方。 

 

正しい”食”とは、バランスの良い食事はもちろんのこと、個々の体質、さらにはそのときの季節までもを考える必要があります。

そしてそれらの考えをふんだんに取り入れ、かつ繊細に仕上げたものが「薬膳」なのです。

「未病」とは?未病を制する者が漢方を制す!

漢方を勉強しているとよく出てくるのが「未病」という言葉。これは一体何を意味するのでしょうか?

日本未病システム学会https://www.j-mibyou.or.jp/mibyotowa.htm)ではこのように書かれています。

 「自覚症状はないが検査では異常がある状態」もしくは「自覚症状はあるが検査では異常がない状態」

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(図3) Y.Fukuo 2000

 つまり、病気の一歩手前の状態を指します。ちなみに「病気」は

「自覚症状もあるが検査でも異常がある状態」

 です。

 

これを車で例えるとこうなります。

「病気」の状態は、車でいう故障やパンクの状態で、

 

 『走れない あるいは 走りに支障が出ており、

  その原因部位を特定できる』

   ⇒ 自覚症状がありなおかつ検査で異常もある

 

といった具合です。

 

一方、「未病」はというと、

 

① 走りに問題は無いが、タイヤの空気圧が低い

   ⇒ 自覚症状はないが、検査で異常あり

 

② エンジン音に違和感があるが、原因不明

   ⇒ 自覚症状はあるが、検査で異常なし

 

どちらの場合も走るにはまだ問題はなさそうですが、そのまま放っておくといずれは故障やパンクにつながるでしょう。

そうなる前に直せるのなら直した方がいいですよね!

 

人の体でも同じこと。

「未病」のうちに治せるのならそれに越したことはありません。

そしてそれを可能にするのが、漢方をはじめとする「東洋医学」なのです!

ほとんどの人は、体に異常が出て初めて治療を考え始めます。

しかし実際には、異常が出る前から何らかの兆候が出ているはず。

それをいち早く感じ取り改善することで、常に健康でいられるのです!

そして東洋医学においては、この「未病」を捉えて治すことが最強の治療法であり、それを成せる人こそが最高の医療者といえるのです!

漢方薬ってホントに効くの?効果を実感するためにまず知ってほしいこと

みなさんは漢方薬に対してどのようなイメージを持っていますか?

体に優しそう、副作用がなさそう、といったプラスのイメージもあれば、一方で、あまり効き目がなさそう、効くまでに時間がかかる、といったマイナスのイメージもあるのではないかと思います。

これらを総合すると、「副作用は弱いけど効果も弱い」といった印象かもしれません。

 

どうしてこのようなイメージが付いたのでしょうか。この理由として、「現在日本では漢方薬を西洋医学的な考えで使っていることが多い」からだと私は考えています。

日本の今の医療は「西洋医学」が主流です。

 

「西洋医学」とは病名処方の医療。

つまり、【診察 ⇒ 病気の特定 ⇒ 治療】といった流れを基本としています。

普段、病院やクリニックにかかったときにお医者さんがやってくれることですね。

最初に病気を特定しておくことで、症状に対してピンポイントに治療をするのです。

このため、使われる薬もピンポイントに作用するものが多く、その分ガツンと効かせるものとなっています。西洋薬は一般的に攻撃的で、素早く症状を抑えることが得意です。

 

一方、漢方薬が属する「東洋医学」は、【診察 ⇒ 体質の把握 ⇒ 治療】の流れで成り立ちます。

診るのは病気ではなく患者の体質そのもの。病気になった原因は体質にあり、病気は体質悪化の結果生じたものと考えます。

ですので病気を治すのではなく、その根本にある原因となっている体質の改善を目指すのです。

西洋医学を攻撃的とするなら、東洋医学は防御力を高めるイメージでしょうか。

その性質上、病気になってからの治療もさることながら、病気になる前の段階(東洋医学では「未病」と言います)から、予防的に処置を行うことに非常に長けているのです。

 

さて、「西洋医学」と「東洋医学」の違いはなんとなく分かっていただけたでしょうか。

漢方薬を使うなら、まずはこの違いをしっかりと意識しなければいけません。

しかしながら、今は西洋医学が主流の時代。

漢方薬が見直されつつある今も、その使い方は西洋医学的なものとなっています。

例えば、「風邪の引き始めには葛根湯(カッコントウ)」と言いますが、これも病名から治療法を判断する西洋医学の考えが基にあり、患者さん個々の体質が考慮されていません。

たまたま体質に合い風邪が良くなることもあるかもしれませんが、たいていは効かずに結局は自らの治癒力で治してしまいます。

 

以上が、漢方薬は「副作用は弱いけど効果も弱い」という誤解を与えてしまった原因だと思われます。

幸い、現在市販されている漢方薬は比較的マイルドなものが多く、体質に合わなくとも効果が出ないだけで、副作用まで出ることはあまりありませんが、なかには重い副作用を招くものも多くあります。

 

漢方薬東洋医学的に用いて初めて真価を発揮します。

その効果は、体質に合うものであれば絶大なものとなります。

ぜひとも、自分に合う漢方薬を見つけてみてください。

ようこそ!漢方薬の世界へ!

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みなさん、初めまして!

このブログの管理人のしめじねこと申します!

このブログは、みなさんに少しでも漢方薬を身近に感じてもらえるよう、漢方薬のおもしろさや奥深さを分かりやすくお伝えすることを目的として開設しました。

 

さて、このページを開いてくれたみなさんは、少なからず漢方薬に興味のある方たちだと思います。

きっかけは何でしょうか?

テレビで取り上げられていたから、という人もいれば、現在何かの治療をしているのにうまくいかなくて藁にもすがる思いで、というような人までさまざまかと思います。

きっかけが違えば目的もさまざまかと思いますが、目的が何であろうと漢方薬に興味を持ったことはとても素晴らしいことです。

なぜなら、漢方薬をはじめ「東洋医学」は、個々の体質改善を目指す医療。

つまり、自分の体と真剣に向き合うことからスタートします。

漢方薬に興味を持つことは、自分の体を知る絶好の機会でもあるのです。

体質が分かれば、自分にあった生活習慣が見えてきたり、市販の漢方薬を自分で選んで試してみたり、といったこともできるようになります。

 

自分の体に意識を向け、体質を紐解き、自分に最適な生活や食べ物・薬を自分で選んで試していく・・・。

まるでゲームのような「東洋医学」の世界。

なんだかワクワクしませんか?

もちろん主人公はあなた自身です!

そしてそのゲームの説明書や攻略本として、このブログを活用していただけるのならこんなに嬉しいことはありません。